終わり良ければ…

全て良し…とはいかないけれど … 日々の記憶を楽しい記憶に書き換えて終わりたい…

「ある奴隷少女に起こった出来事」 ハリエット・アン・ジェイコブズ(訳 堀越ゆき)… 今週の読書

 

ある奴隷少女に起こった出来事 (新潮文庫)

ある奴隷少女に起こった出来事 (新潮文庫)

  • 作者: ハリエット・アンジェイコブズ,Harriet Ann Jacobs,堀越ゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/06/28
  • メディア: 文庫
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新潮文庫の100冊」2017 の中の1冊

 

読者よ、わたしが語るこの物語はフィクションではないことを、はっきりと明言いたします。

......

奴隷制によって引き起こされた悪を、私は大げさに書いたわけではありません。むしろ、この描写は事実のほんの断片でしかないのです。

 

このような序文からはじまる本書は、そう、にわかには信じられない が、「実話」なのだ。

160年前に、無名の黒人奴隷女性の手によって綴られ、自費出版され、奴隷解放運動の集会などで細々と売られ、やがてほぼ完全に忘れ去られていたものだ。

執筆から、120年以上の歳月を経て、再発見され学術的な注目を集めることになり、それから、じわじわと読者を増やしながら、この度、新潮文庫の新刊として、書店に並んだ。

 

奴隷州(南部)に、黒人奴隷として生まれた女性は人格を持つことすら許されない。

家畜と同様に、家財の一つとして扱われ、14歳か15歳になるころには、奴隷少女を支配する好色な主人らによって乱暴される。

そして、生まれた子供は、たとえ自由人の血が混じっていようと、「母の身分に付帯する条件を引き継ぐ」ため、生まれながらに奴隷となるのだ。

父親としての愛情がその子に注がれることはない。お金になる家畜が増えるくらいの喜びは、持つかもしれないが......

 

"ある奴隷少女に起こった出来事"

これは、国家、法律、正義にも見捨てられた黒人奴隷の一少女が、人権と自由を手にするため、また、人としての尊厳を守るため、命をかけて戦った記録だ。

私は、今まで、奴隷制度の残忍さを本当の意味で知らなかった。今でも知っているとは言えないだろうが......

歴史としての、奴隷制度や南北戦争について、うすぼんやりと記憶にはあるが、一人の人間としての視点から見ていなかった自分に対して、失望し、愕然とした。

 

人が、当然の基本的人権を手にするために、いったいどれだけの涙、汗、血が流れてきたことか。

いや、本当にこの根深い悪制の名残が、完全に拭い去られることなどあるのだろうか。

 

形は違っても、この日本でも、このような歴史を繰り返し、人としての尊厳を声高に語ることが出来る今がある。

私が、あたりまえのことのように考えていることや正義が、当たり前ではなかった時代を、私は知らないで育った。

当然のもの過ぎて、大事にしてこなかったものが、どれだけ沢山あることだろう。

奴隷少女が手にするために命をかけた、尊厳や信念を、自ら捨ててしまったこともあった......

社会に目を向けると、

格差社会、抜け出せない貧困連鎖、パワハラなど、様々な社会問題が存在している。

形は様々ではあっても、ランク付け的なものの見方が根底にあるのだろう。

どうやら、人類はいまだに、「優劣をつけたがる弱い心」からの自由を手に入れることが出来ないでいるようだ。

 

環境が人の考えを変える。その時々の社会が「正しいこと」として提供するものや、価値観によって、容易に自分の考えが影響されることもあるだろう。

自分は、これから先、社会がどのように変化していっても、勇気をもって自分の価値観を持ち続けることが出来るのだろうか。